当院は開院当時から、小児〜ご高齢者までの鼠径ヘルニア手術を行ってきましたが、鼠径ヘルニア治療の進歩に対応して患者さん方に適切な診療を御提供できるように、H19年には鼠径ヘルニアセンターを開設しました。乳児からご高齢者までの鼠径ヘルニア手術を行っております。
- 鼠径ヘルニアとは
男性では精巣の血管や精管、女性では子宮を固定する靭帯が通る穴(内鼠径輪)からお腹の中の臓器や脂肪が張り出してくる外鼠径ヘルニアと、その内側で腹の壁(腹壁)の一部の強度が弱くなって、お腹の中の臓器や脂肪がその部分から張り出してくる内鼠径ヘルニアがあります。大腿ヘルニアまでを含めて鼠径部ヘルニアと呼ばれますが、大腿ヘルニアまで含めて鼠径ヘルニアと呼ぶこともあります。
鼠径ヘルニアの症状(アニメーションもご参照ください)
鼠径部の一部が膨らみます。大きさはさまざまで男性では陰嚢までが膨らむことがあります。ヘルニアが出ているときに、痛みがある、お腹が張る、吐くといった症状があるときは嵌頓ヘルニアという状態になっている可能性があり、その場合緊急手術が必要なことがあります。
- 小児の鼠径ヘルニア
小児の鼠径ヘルニアは1歳以下の赤ちゃんに最も多く、幼児期にも比較的多いですが、小学生や中学生になって発症することもあります。泣いたときや立った時、お腹に力を入れたときに膨らむ事が多いですが、寝ていても膨らんでいることもあります。小学生、中学生ではスポーツの時に症状が現れることもあります。ほとんどが外鼠径ヘルニアですがまれに内鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアがあります。
- 成人の鼠径ヘルニア
成人の鼠径ヘルニアは中年以降の男性に多いですが、若い方や女性にも発症します。
ヘルニアのタイプとしては、男性では外鼠径ヘルニアが最も多く、次に内鼠径ヘルニアが多く、大腿ヘルニアは少ないです。女性でも外鼠径ヘルニアが最も多いですが、男性に比べ大腿ヘルニアも多いです。大腿へルニアは嵌頓を起こしやすく注意が必要です。症状からのみでヘルニアのタイプを診断することは難しいことが多く、超音波検査やCT,エコー検査または手術時にヘルニアのタイプがわかります。
鼠径ヘルニアの原因(アニメーションもご参照ください)
鼠径部の断面図で説明しますと、外鼠径ヘルニアでは内鼠径輪というお腹の壁の穴、内鼠径ヘルニアでは鼠径管の壁の弱い部分、大腿ヘルニアでは下肢に出入りしている血管が通る穴から、腸や脂肪、女の子では卵巣などが出っ張ってきて外から見るとその部分が膨らんでいる状態です。そのような臓器が戻らなくなってしまうと、嵌頓ヘルニアという状態となり、腸閉塞や脱出臓器(腸管や卵巣など)の壊死をおこすこともあります。その場合、嘔吐や痛み、お腹が張るなどの症状があり一刻も争う緊急手術が必要です。
小児鼠径ヘルニアの手術(アニメーションもご参照ください)
小児鼠径ヘルニアのほとんどは外鼠径ヘルニアであり、手術では、臓器が出するヘルニアの袋(ヘルニア嚢のう)が出てきている穴(ヘルニア門)の近くでヘルニア嚢のうを糸で縛って閉鎖し、臓器が脱出しなくなるようにします。
主に下記の二つの方法が用いられています。
- 高位結紮法
鼠径部の皮膚を切開して直接目で見ながら、ヘルニアの袋(ヘルニア嚢のう)をヘルニア門の近くで糸で縛り閉鎖します。
- 腹腔鏡下手術(LPEC法)
お臍を小さく(5-10mm)切開して内視鏡を挿入して、ヘルニアをお腹の中側から観察し、別の穴から挿入した鉗子と鼠径部からヘルニア門周囲に刺した針を用いてヘルニア嚢(のう)を根本で縛ります。
- ≪入院期間≫
高位結紮法、腹腔鏡下手術とも1泊2日で行っております。
成人鼠径ヘルニアの手術(アニメーションもご参照ください)
- 切開法
鼠径部の皮膚を切開(3cm〜5cm)して、ヘルニア門の穴を直接目で見ながら、周囲の腹壁の弱い範囲も含めて補強するようにメッシュをあてます。ヘルニア門に到達する方法やメッシュを置く位置、メッシュの形や素材にはいろいろな種類があります。
当院では局所麻酔で痛みを取り除いて、全身麻酔での鎮静と併用しての手術を行っておりますので、体力的な負担が少なく、ご高齢者の方などでも手術を受けていただけます。(術前検査による全身状態の評価は一般手術と同様に必要です)腹腔鏡手術に比べ麻酔からの回復が早いです。
- 腹腔鏡下ヘルニア修復術
お臍やその近くを小さく切開し5〜10mmの内視鏡を挿入して、ヘルニア門をお腹の中側から観察し、お臍や他の場所の小さな切開創から差し込んだ腹腔鏡用の様々な器具を用いて、ヘルニア門と周囲の腹壁を補強するようにメッシュを敷きます。腸などの臓器が収まっている腹膜の内側(腹腔内)からヘルニア門に到達する方法(TAPP法)と、腹膜の外から到達する方法(TEP法)があります。また、成人でも症例によっては小児と同様のLPECを採用している施設もあります。 腹腔鏡下手術法は一般的に、切開法に比べ傷が小さく、欧米のデータでは術後しばらくたっても残る鼠径部の痛みが、切開法に比べて少ない傾向にあるとされています。しかし、本格的な全身麻酔が必要です。
- ≪入院期間≫
切開法、腹腔鏡下手術法とも1泊2日から2泊3日で行っております。
ヘルニア手術入院のながれ (日帰り)
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外来ヘルニアセンター受診
受付、問診、診察、超音波検査、説明
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外来受診
ご入院の約1週間前(午後)
術前検査、入院についての説明(当日入院の場合、手術についての説明)
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手術日の決定
手術予約
受診当日もしくは後日電話連絡をいただき手術予約
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手術当日入院
8:30 外来にお越しください
外来にて診察後、病棟にご案内します。 -
手術準備
病室で手術前の準備(点滴など)
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手術
9:30〜 手術
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病室へ帰室
術後2時間半で歩行、飲水可能となります。
術後3時間半で食事が可能となります。
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帰宅
17:00〜 帰宅
付き添いの方が必要です
手術当日は、ご本人は運転出来ません。(麻酔の影響が残っているため)
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翌朝
主治医より電話にて術後経過の確認
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外来受診
手術より一週間後外来受診
診察にて終了
- 3か月後、1年後の経過観察受診をお勧めすることもあります。
ヘルニア手術入院のながれ (1泊2日もしくは2泊3日)
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外来ヘルニアセンター受診
受付、問診、診察、超音波検査、説明
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手術日の決定
受診当日もしくは後日電話連絡をいただき手術予約
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外来受診
ご入院の約1週間前(午後)
術前検査、入院についての説明(当日入院の場合、手術についての説明)
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入院
手術前日午後もしくは当日朝
手術についての説明
(小児の場合は当日入院、成人の場合は前日午後もしくは当日朝入院)
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手術
午前もしくは午後 手術 -
退院
手術翌日 午前中
診察、食事、午前中退院
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外来受診
手術より一週間後外来受診
診察にて終了
- 3か月後、1年後の経過観察受診をお勧めすることもあります。